2002年03月02日

古書愛好会(西部古書会館)

以下は、かつて管理人が公開していた「明治史研究のための古書店めぐり」に掲載していたものです。閉鎖にともない、このブログに転載しました。

2001年の11月に初めて高円寺で開催される古書市のすばらしさを知って以来、何度か足を運んだが、そのたびに重い袋を持ってかえってくることになっている。本当に、西部古書会館の古書市は掘り出し物が多くてすばらしい。家からも電車で4駅なので、これからもお世話になることだろう。しかし、本の置き場がどんどんなくなっていく。そのうち本の上に寝ることになりそうだ。マジな話。
なお、今回から出品店名を書くのをやめる。私自身が面倒くさいというのと、出版元と勘違いする人がいる、という二つの理由からである。(2002.3.2)

紀田順一郎『落書日本史』 200円
この本は旺文社文庫からも出されているが、私が買ったのはそのもととなった三一新書版。昔の落書(らくしょ)の中には、読み手の側にも、或る程度の知的能力が要求される難解なものも多い。同時代ですら、そうであったのだから、社会状況の全く異なる今日の人間がむかしの落書を読もうとしても、そこらのパズルよりはるかに難解なものに感じるのは有る意味当然かもしれない。この本はそういった落書を今の人間に面白く生き生きと伝えてくれる本である。
遠藤鎮雄『かわら版明治史』 200円
これは角川新書の本。角川新書には、今ではなかなかお目にかかれない名著が多い。たとえば松永昌三の『明治のバックボーン』などはそうしたものの一つであると思う。他に角川新書では、私は筑波常治先生の『明治天皇』を探しているが、未だ一度もお目にかかったことはない。話がそれるが、筑波先生は私の学部時代の恩師で、知る人ぞ知る「緑の麗人」で、服から何から、すべて緑でそろえている人であった。住所も武蔵野市の「緑町」で、おまけに、私が一度ある書類に印を押してもらったところ、その朱肉まで緑色だったのである!もはや「朱肉」ではなく「緑肉」(なんだそりゃ?)である。そして筑波先生は、旧山階宮家のご子孫にあたる方で、紳士の風貌を備えている人でもあった。成績評価は「全良制」と言われ、実際友人たちもみな良であったのだが、私だけは取る授業全て優をいただいたので、大変感謝している。筑波先生も既に退官されたので、この種明かしをすると、別に私は取り立てて勉強したわけでもなんでもなく、テストの答案の最後に一年間のお礼と、とても授業が面白かった旨の言葉を懇切に書いただけなのである。要するに、個性的な先生だったので、他人と違うことを何かすれば優をくれる先生だったのである。昔は、緑のペンで答案を書くと優が来たそうだが、そのうちみんながやるようになってきたので、この技は通用しなくなってしまったという。先輩は、答案に「克己 SELF CONTROL」とだけ書いて、優が来たと言っていた。いい意味でも悪い意味でも、こうしたアバウトさが早稲田の特色だったと思うのだが、最近は早稲田らしさがなくなってきて少し悲しい。何か『かわら版明治史』と全く関係ないことを書いてしまった。
松浦玲『暗殺 明治維新の思想と行動』 200円
幕末史を暗殺の視点から描いた書。安いのでとりあえず購入。
末松謙澄『修養宝鑑明治両陛下聖徳記』 500円
伊藤博文の婿・末松の書だけに、明治天皇と昭憲皇后に関する興味深い記述がいくつかある。実はこの本は大正8年刊の初版はもっており、今回買ったのは大正11年刊の四版だったのだが、装丁が初版よりも豪華で、天金まで施されおり、またかなりの美本だったのでまた購入した。
渡辺茂雄『明治天皇』 500円
渡辺茂雄の『明治天皇』といえば、戦後に出たピンクの函に入った本をよく見かけ、私も昔購入したが、この本は戦時中に出されたもので、戦後版のもととなっている。内容に異同があるかどうかはわからないが、あとで比べてみようと思う。
野村秀雄『政党の話』 500円
第二朝日常識講座の第五巻。日本政党史の記述があるので購入。野村秀雄は広島県出身のジャーナリストで、朝日新聞の代表取締役や熊本日日新聞の社長、NHKの会長などを務めた人物で、ジャーナリストらしい批評が間々記されている。
ラボック原著・渋江保訳『処世方針幸福要訣』 500円
この本は明治本(明治24年刊)。今回の愛好会では、博文館叢書が多数出ていた。どれも買ってかえりたかったが、持つ体力と、置く場所のことを考えるとそういうわけにもいかず、この1冊だけ題名が気に入ったので購入する。渋江保は、いうまでもなく、森鴎外の名作『渋江抽斎』で有名な抽斎の子供であり、鴎外が執筆する際に、父の資料を提供した人物でもある。明治本の美本が500円なんて神田では絶対に考えられない。ああ、もっと早く高円寺を知っていれば・・・。
井上右『興亜先覚詩史』 500円
昭和19年に出された本なので、紙質が悪すぎて、印刷がかなり不鮮明になっているが、非常に珍しい本である。いわゆるアジア主義者またはそれに類する人々の漢詩を解説した本である。近代日本のアジア観などを研究している人にとっては、喉から手が出るほどほしい本であるに違いない。
中江篤介『一年有半』 200円
この本は明治34年発行の15版である。岩波文庫でも持ってるし、中江兆民全集も持っているのだが、冒頭に本書への各新聞の評が出ているのが重宝であるのと、値段が200円と激安なので購入。中江兆民の明治本が200円とは全く信じがたい。
市川房枝『市川房枝自伝 戦前編』 200円
この本はよく古本屋で見かけるが、200円ぐらいのが出るまで買うまいとして流していたら、案の定出てきたので購入。函つき、美本である。なお、この自伝は戦前編と銘打たれているが、戦後編はついに出なかった。自伝ではなく、他人が書いた伝記に、戦後編と銘打ったものが存在する。
肥田琢司『政党興亡五十年』 500円
原敬や田中義一の下で政治家として活動した肥田の回顧録。明治末から昭和戦前にかけての政治史を回顧したもの。まだ中身をよく読んでいないのでどの程度の情報量があるのかは不明。
雑誌『史海』第1巻〜第10巻合冊 500円
これは今回の掘り出し物の一つ。この『史海』という雑誌は、田口卯吉がやっていた歴史雑誌なのだが、この雑誌の第7号に久米邦武の「神道は祭典の古俗」論文が掲載されて、問題となったのである。久米の論文は前年史学会雑誌に発表されたもので、これはその転載だったのだが、初出は学術誌であったためにあまり人目にもふれなかったのだが、『史海』の方は一般人も読む本だったので、騒ぎが大きくなったのである。そういった意味でこの史料は歴史そのものといえるような代物だが、おそらく出品店主は知らなかったんだろうなあ。500円とは本当に信じがたい。
『皇太子殿下御慶事千代乃祝』 500円
これも500円というのが信じがたい本である。これは、嘉仁親王(大正天皇)の結婚を記念して出された本で、風俗画報の臨時増刊として出されたものである。
『日本皇室事典』 300円
新人物往来社の歴史百科の一冊として出されたもの。安いのでとりあえず購入。

古書集めは本当に奥が深い。次から次へと面白い本が出てくる。それにしても、毎回こんなに買っていたら、本当に置く場所がなくて困ってしまう。一体どうすればよいのだ???


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