明治の勝因はなんといっても、天理の外国人3人を完璧に止めたこと。一人目が足に、二人目が上半身に入るタックルでしっかり仕留め、大きなゲインを許しませんでした。またブレイクダウンの攻防についても、天理がボールを持っている際にはしっかりと押し込めていたと思います(それでも天理の強さに、攻撃が継続されると徐々に押し込まれたりはしましたが、何度かのターンオーバーも出来ましたし、あれ以上を望むのは酷でしょう。逆に課題が残ったのは明治オフェンス時で、2人目のサポートが遅くてボールキャリアが孤立することが多く、速攻できなかった・何度かターンオーバーされたことです)。
両チームともに、決勝での緊張もあったのか、ミスは多かったですが、当たりの激しさという点では、今年度の大学チームの試合では最高の内容だったように思います。
最初の3分で天理があっさり先制した際にはワンサイドゲームも予想しましたが、その後すぐに明治が取り返し、続いて見事なサインプレーで2トライ目を奪ってリードを奪ったのが大きかったと思います。特に、事前に準備されたトリッキーな動きを取り交ぜて、まだゲーム慣れしてない天理防御を突いていたのが印象的でした。これで天理は追う展開を余儀なくされました。また前半最後の、トライすれば同点のシーンで、天理がインゴールまで持ち込んだボールを明治がグラウンディングさせなかった必死の防御。これは勝敗を左右する、かなり大きなプレーだったと思います。
後半28分の時点で22-5で明治が17点のリード。この時点で誰もが明治の優勝を一回確信したと思います。しかしその確信をまた不安に変えるその後の天理の怒涛の攻めも見事でした。まさか10分でどっちに転ぶかわからない状況にまでなるとは、誰も予想しえなかったと思います。それだけ、天理がボールを持つと勢いがすごかった。あの攻撃を天理がもっと早くから出来ていれば、天理が勝ったでしょう。いやこれから数回同じ組み合わせで試合をすれば、かなりの割合で天理が勝つ、それくらい天理の攻撃力はあったと思います。
それだけに、天理はマイボールを継続して攻撃の時間を長くできなかったのが悔やまれます。明治のタックルの良さもありましたが、何より敗因は、ラインアウトの失敗にあったと思います。スクラムであれだけ優勢に進めながら、攻撃時間を長くできなかったのは、ラインアウトでボールを奪われることが多かったためです。ここの修正だけで、おそらく結果はひっくり返っていたでしょう。ここまで天理がラインアウトに苦しむとは私も予想していませんでしたが、逆にいえば、明治がそれだけ身長の高さを生かして、天理を研究しつくしていたということでもあります。
明治にもミスは多かった。たとえば残り10分、明治がターンオーバーした際に、SH福田選手がマイボールをすぐに蹴ってしまったのは、さらに得点を狙いにいったのでしょうけれども、もし蹴らずにキープして継続していたら、天理のラストトライは無かったはずで、もっと楽勝できたでしょう。両チームとも、無意味な球の蹴り合いが多く、マイボールからの攻撃の機会をみすみす失ったこともありました。それでもリードしている明治はそれでもよいでしょうが、天理にとっては後半の前半、球の蹴り合いに応じてしまって、みすみす攻撃の起点を逸した点は痛かったように思います。他にも判断ミスは両チームともにいろいろあって、たらればもいろいろあるのですが、緊張ということ以上に、それだけ相手チームの当たりの激しさにプレッシャーを受けていたために、冷静な判断ができなかったという面があったのだと思います。ゲームのレベルが高い故のミスだということです。
私の友達には明治大学の関係者も、天理大学の関係者もいらっしゃるので、おめでとうございます、残念ですが来年こそ!と、両方言わなくてはならない立場ですが、どちらにせよ、今シーズンの大学最高水準のチーム同士の試合であったことは間違いありません。本当に見事な試合でした(あまりにすごい試合であったからこそ、両大学の関係者でもないのにこんな長文を書いてしまいました)。そして、敗れてしまった天理大学は、今年度の主力選手が残りますので、来年度は断トツの優勝候補筆頭になるのではないかと思います。特にミスの目立った13番のフィフィタ選手はまだ2年生ですから、これからきっと凄い選手に伸びていくことでしょう。
ちなみに、今の明治大学の選手は、主将の福田健太選手をはじめ、明るくかわいらしいor朗らかな感じの学生が多く、かつてのゴツくて反抗的で怖そうな選手ばかりだった明治とはなんだか変わりましたね。福田健太という名前で思い出すのは、やはり20年ぐらい前に、明治のBKにいた福田健太郎という、トリッキーな走りをする選手です。相手チームながら好きな選手でしたが、あの福田健太郎選手と名前が一字違い、身体も同じように大きくなくて細身の選手ということが共通していますが、しかしそれでも雰囲気がかなり違っていて、現在の福田主将はかわいらしく朗らか、福田健太郎選手はトリッキーでずるがしこそうな感じ(失礼)でしたので、そこも時代の変化を感じさせるなと思いました。ラグビー選手だけでなくて、今の学生を見てみても、昔みたいな反抗心丸出しの怖い学生とか、ずる賢そうな学生は減りましたし、かわいらしい素直な学生が増えたように思います。それとも、私が歳をとったためにそう見えてしまうだけなのでしょうか?
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