以下は、かつて管理人が公開していた「明治史研究のための古書店めぐり」に掲載していたものです。閉鎖にともない、このブログに転載しました。今年もやってきた、早稲田青空古本祭。学部1・2年のころはこの古本祭で本を買うなんてことはほとんどなかったのだが、いまや初日の朝10時開会前から出向く始末。初日の朝から来るのは去年につづき二回目である。去年は結構早くから人がいたが、今年は雨の影響で、少し人が少なめであった。去年は渥美書房の棚で三宅雪嶺や福本日南の本を500円という破格の値段で数冊手に入れることができたので、今年も渥美書房の棚の近くで開会の10時を待つ。10時、いよいよ開会の時。係員がテープにはさみを入れるより早く、人々が棚になだれ込んでいく。わたしも一緒になだれこんだ。しかし、今年は渥美書房の棚はハズレで、いいものが一冊もなかった。その後、11時30分ごろまで会場を回るが、去年の雪嶺や日南のような逸品はなかった。しかし、値段が安いので「とりあえず買っておくか」的な感覚で次々選んでしまい、結局、これまでの早稲田古本祭の中で、一番多い冊数を購入することとなった。以下この日の収穫物である。( )内の古書店名は、その品物を売っていた店名である。
西川正治郎『幽翁』 300円 (ぶっくす丈)
言うまでもない伊庭貞剛の伝記。安いので買った。
大宅壮一『実録天皇紀』 300円 (ぶっくす丈)
この本はすでに一冊持っているが、面白い本なのでさらにもう一冊購入。あとで誰か関心のある人がいたら譲ってあげるつもりで買った。「当時地方の一中学生であった私は、国語の時間に『教育勅語』の中の一句「一旦緩急アレバ」について質問し、これは文法的には「アラバ」のまちがいではないかという意見を述べた」という本書冒頭の文章を読んで、たしかにそうだな、と初めて気づかされたが、いったいなぜこんな文法の間違いが出てきたのだろう。あんなに練ったものであったはずなのに。それとも間違いではないのだろうか?どなたかご存知の方がいたら教えてほしい。
高野善一『早稲田学風』 300円 (ぶっくす丈)
この本は以前図書館でななめ読みしたことがあるが、とても面白い本である。ひとくせもふたくせもある文体で、早稲田の学風を描きだしているのだが、この高野という人は人間的にもひとくせもふたくせもある人物だったようで、どっかの対談で「高野善一じゃなく高野悪一だ」などと悪口をいわれているのを読んだことがある。
栗原広太『明治の御宇』 300円 (ぶっくす丈)
栗原は元宮内省職員。本書のほかに『人間・明治天皇』などの回想録がある。『明治の御宇』の方はよく見かけるが、『人間・明治天皇』の方は探しているのだが見つからない。
キング付録『明治大帝附明治美談』 300円 (ぶっくす丈)
むかしこの本は軽井沢のりんどう文庫で100円で売っていたのです。なぜあの時買っておかなかったのか・・。私は馬鹿です。100円ならいらなそうでもとりあえず買っておけ!これからはそうします。
大内青巒『心地観経報恩品講義』 300円 (ぶっくす丈)
これはなんと明治本。明治本を300円で手に入れられるとは、さすが早稲田。「心地観経報恩品」は近代の仏教思想史を考える上でとても重要な経典で、特に天皇制と仏教とのかかわりを考える上ではこの経典がなぜ明治期に重んじられたかを考えることが不可欠だろう。。
寺尾宏二『明治前期京都経済史』 500円 (金峯堂書店)
初めて見た本だが、とりあえず安かったので購入。史料を多く引用して、内容的にも豊富。単なる好事家の書ではなく、後でなにかの役に立つかも。
岩上二郎『公文書館への道』 500円 (金峯堂書店)
500円だったのでとりあえず購入。
坂本太郎『日本の修史と史学』 350円 (寅書房)
日本歴史新書の増補版。よく見かける本だが、最近史学史に興味が生じてきていることもあり購入。
松下芳男『三代反戦運動史』 300円 (寅書房)
日本軍事史の開拓者松下芳男の古典的名著。1960年再版本。本書は今となっては特筆すべきほどの本ではないが、安いので購入した。
鹿野政直『日本近代思想の形成』 600円 (関書店)
本書は鹿野先生が一番最初に出した単行本である。この本は昭和31年に新評論社から出ていて、一度絶版になったあと、辺境社というところから再版が出されている。再版の方はよく古本屋で見かけ、私も持っているが、初版の方はめったに見かけない。今回の収穫の中でも貴重なものの一つである。
船山信一『明治哲学史研究』 1300円 (浅川書店)
これはずっと探してた本なので手に入ってうれしかった。船山信一は著作集が近年刊行されたので、8000円出せば購入できるのだが、そんなに払うのは馬鹿らしいと思っていた。また著作集ではなく、私が購入したのと同じものが神保町の某書店では1万円近い値段で売っている。これまで何度か目にしたことはあったが、どれも高かった。それが1300円で手に入るとは夢のようだ。
柳田泉『明治初期の翻訳文学』 700円 (古書現世)
早稲田の誇る大学者の一人で、私が尊敬する一人、柳田泉大先生の名著である。いや、ただ尊敬するだけでなく、柳田先生が早稲田に残してくださった柳田文庫にはどれほどお世話になったか知れない。私が買ったのは戦後の方ではなく、戦前に出た明治文学叢刊の第一巻。神田の某書店では2万円の値がついているのを見たことがある。それは高すぎるとはいえ、まさか700円で買えるとは思ってもみなかった。今回の最大収穫であろうか。家に帰ってから気づいたが、おそるべきことに、本扉に柳田泉大先生の署名と印があるではないか!ちなみに私は2年ぐらい前、柳田大先生の『政治小説研究』(戦後出た方)がどうしてもほしくて3万円出して買ったのだが、あれも待ってればそのうち安く出てくることもあるんだろうか。そしたらきっとくやしくてまた買ってしまう気がする。
会計の時に気づいたが、去年までやっていた、古書を買える金券のあたる抽選が、今年から廃止されていた。早稲田の古書店街で使える一割引券は今年も配布していた。会計を済ませ、会場で会った荒船俊太郎・榊原康洋の両氏と文学部のカフェテリアで昼食をとったあと、荒船氏と二人で早稲田古書店街に繰り出した。そこでの収穫は以下の通り。
原田敬一『国民軍の神話』 1170円 (二朗書房)
この本は出てまだ一ヶ月の本。久々に出た吉川の「ニューヒストリー近代日本」の4冊目。半額以下で手に入るなんてうれしい。
渡辺幾治郎『史伝山本元帥』 1620円 (二朗書房)
以前三鷹の書店で買おうかどうしようか迷った挙句買わなかった本だが、あの時買わなくてよかった。あのときより1000円近く安い。渡辺幾治郎にしてはめずらしい昭和ものだが、山本元帥と出身地が一緒だから書いたらしい。
満鉄東亜経済調査局『印度概観』 700円 (さとし書房)
わたしは学部3年の時にインドに行き、それ以来インドにはまった。いつかもう一度行きたいと思っているが、果たせずにいる。その時以来インドの本を買い集めているのだが、特に大学院に入ってからは戦前のインド関係書籍を集めている。とはいえ、基本的に1000円以上のものはかわない方針である。いまのところ、20冊ほど集まったが、買ってもすぐに押入れにしまってしまい、全然読んでいない。でもさしあたり博士課程での研究が第一なのでやむをえないだろう。いつかはまとめ読みして、日本とインドの関係史や、日本のインド認識とかをたどってみたいと思っている。
吉川幸次郎『論語』3冊揃(朝日文庫中国古典選) 400円 (古書現世)
朝日文庫の中国古典選シリーズはとてもいいのが揃っている。私は『孟子』がほしくて安く売ってないかとずっと探している。それはともかく、吉川幸次郎氏はかつて『漢文の話』を読んで面白かったので、本書も期待して購入。中をパラパラめくった感じでは、読みものとして面白い構成になっている。その上、訓読や文法の知識も吸収できそうに配慮して書かれているように思える。
『松本剛吉政治日誌』 2700円 (渥美書房)
本書は、荒船俊太郎氏に安く売っていることを以前教えてもらっており、この機会に購入した。これほど安いのはめったにないのではないだろうか。もちろん函つきである。
結局この日の購入冊数は全部で20冊、値段は12840円だった。一冊あたりの値段はかなり安い。やはり早稲田は質よりも安さが売りだなと実感した。なお、翌日再び出向いて、初日に雨で確認できなかった文庫本を見るが、ろくなものがなかった。去年までは文庫の均一本コーナーがあったはずなのに、今年からはなくなっていた。いい文庫もないうえに、高いなんて話にならない。ただ一冊
鳥井博郎『明治思想史』(河出文庫)を150円で購入する。戦前に書かれたマルクス主義的思想史の傑作である(文庫化されたのは戦後)。またその次の日もちょっと暇だったので立ち寄り、
西郷従宏著『元帥西郷従道伝』を1000円で購入した。著者は従道の孫である。
向井 透史
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